水環境の調査研究から、社会と環境の関係やそこにある問題について考えてみよう!
応用生物学部 浦瀬 太郎 教授
上下水道、河川、廃棄物に関連する水環境分野の研究を手がけている浦瀬先生。前回の取材では、人の感覚に根ざした水質評価として“臭気”に注目した研究や抗生物質に耐性を持つ細菌の研究について伺いました。今回は、それらの研究がどのように進展したのかということを中心にお話しいただきました。
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多摩川へ流入する水路での現場調査(昭島市付近)
■前回の取材では、臭気や抗生物質耐性菌のご研究についてお話しいただきました。その後、これらの研究はどのように進んだのでしょうか?
臭気に関する研究からいうと、河川水の臭いの原因物質として、これまで注目されていなかった物質が関係していることがわかりました。一時期、ワインのコルク栓から出てくるカビ臭として“2,4,6-トリクロロアニソール”という物質が問題になっていたのですが、河川水にも同じ物質が多く含まれていることが、調査により明らかになったのです。河川の水には、この物質が臭気閾値(臭うか臭わないかぎりぎりの濃度)の最大50倍と、非常にたくさん含まれているようです。とはいえ、なぜ河川の水にそれが多く含まれているのか、その物質はどこから来たのかという起源まではわかっていません。“2,4,6-トリクロロアニソール”という物質は、自然界では生成しないものですから、下水処理水など人の活動と関係して、河川水に含まれていると考えられます。ただ、下水処理水に、なぜその物質が含まれているのかという理由についてまでは、わかりません。ですから現状、“2,4,6-トリクロロアニソール”で、河川の臭気のかなりの部分が説明できそうだという段階です。ワインコルクのような食品に関連するものと環境とで、共通するカビ臭の物質があるというのも、ちょっと驚きですから、この物質に着目したことは、よかったなと思っています。
抗生物質や合成抗菌剤が効かない薬剤耐性細菌(耐性菌)の研究の方では、2011年から2012年にかけて、多摩川の水に含まれる大腸菌のうち特定の抗生物質に耐性のあるものが、どのくらいいるのかをフィールド調査しました。この調査では、第三世代セファロスポリン系という比較的新し